年間労働日数協約:破棄院による、法解釈変更と制度有効性の最低限調整との均衡(破棄院社会部 2011年6月29日 判決 第09-71.107号)
背景:待ち望まれていた中で下された2011年6月29日の判決で、破棄院社会部は年間労働日数協約(以下「労働日数協約」)は有効であると判断しました。
この制度は2000年1月19日法律第2000-37号、通称「オブリII法」により創設され2005年8月2日法律第2005-882号と2008年8月20日法律第2008-789号 によって補完されていました。これらの法律により、十分な自律性を持って自らの労働時間を編成できる給与労働者については、労働時間の計算に当たり、時間数でなく年間日数を用いることができるようになりました。この結果、こうした労働者は1日あるいは1週間当たりの最長労働時間に関する規定にも、法定週労働時間数に関する規定にも縛られなくなりました(労働法L. 3121-48条)。このため、こうした給与労働者は、時間数による労働時間計算に基づく残業時間についての規制からも除外されていました。ただし11時間以上連続して休養を取ることは義務付けられているため、労働日数協約に従う給与労働者は、1日13時間、週78時間働くことができるようになっていました。
2010年6月23日付の2つの決定で欧州社会権委員会(労働者組合CGT及びCGCによる提訴を受けて欧州委員会レベルで組織された専門家による独立委員会)は、過去の2つの決定を確認し、労働日数協約は1961年欧州社会憲章違反であると判断しました。同委員会は、この制度が不合理な週労働時間等を正当化するものであると評価したのです。
欧州社会憲章違反にはいかなる制裁措置も規定されていませんが、この憲章はフランスも批准しているので従う義務があります。フランスの裁判官は、したがって、これを参照することができます。
こうした経緯から、労働日数協約の有効性に関する破棄院の判断が待たれていました。
破棄院は労働日数協約の原則自体を無効とする可能性があるとの見方もありました。その場合、フランスの全給与労働者の10%を占める労働日数協約締結者は(5年間にわたる)相当な残業時間数に対する手当の支払いと、偽装労働に対する補償を請求できることになっていたでしょう。
本件の事実関係:ある管理職労働者が、労働編成に関する冶金業の1998年7月28日付労働協約により、労働日数協約下に置かれていました。辞職後この労働者は、労働日数を管理せず、労働時間編成と労働負担の管理を行わなかったとして雇用主を訴えました。この労働者は、雇用主が労働日数の管理に関する労働協約の具体的規定を遵守しなかったため、労働日数協約はこの労働者に対抗力をもたず、従って自身には残業手当の支払いを求めることができると主張していました。
カーン控訴院はまず、雇用主による労働日数協約適用の管理が不十分であったからといって、直ちに労働日数協約そのものが問題視されるものではないと判断しました。
しかし破棄院社会部は、1946年10月27日憲法前文第11項、欧州社会憲章と労働者の基本的社会権に関するEC憲章に言及した欧州連合の機能に関する条約第151条、2008年8月20日法律第2008-789号以前の労働法L. 3121-45条及び1998年7月28日付の労働編成に関する冶金業の労働協約に鑑み、控訴院のこの判決を破棄しました。
破棄院は、雇用主が「労働者の安全と健康を守るための」(労働日数の管理、労働編成と労働負担の調査など)協約の規定(本件では1998年7月28日付の労働の編成に関する冶金業の労働協約)に従うことをしなかったと判断しました。破棄院はまた、「健康と休息の権利」にも言及しています。これにより裁判官は、「労働日数協約はその効力を奪われ、労働者は残業手当の支払を求めることができる」と結論付けました。
この判決の意義:
第一に、破棄院は、労働日数制度の欧州社会憲章違反に基づく法的理由を職権で提起することを拒否しました。ただし破棄院は、労働協約をその有効性規制の法的枠組みとしています。
実際、労働日数協約は(各給与労働者との個別の労働日数協約の署名に加えて)労働協約の締結を前提としています。労働協約は労働時間上限を厳密に定めることを要しませんが、労働負担を評価し、定期的に検査できるようにするため、最長労働時間及び休息時間に関する強行規則を遵守するための業務調査方法(上司の責任の下での自己申告制度、IDバッジ制度、など)を具体的に定めることを必要としています。ちなみに、この要件は、労働日数協約下の給与労働者の労働時間が「各労働者の働いた日数あるいは半日労働日数をまとめて毎年計数」されなければならないとする労働法D. 3171-10条の規定にかなっています。また同L. 3121-46条は、労働負担、労働編成、仕事と私生活の兼ね合い、報酬に関して、労働日数協約下の給与労働者と毎年個別に面談をしなければならないと定めています。
破棄院はこれらの義務に言及した上で、 (i) 労働日数協約が、それに十分な保証を与える労働協約により規制されていること、及び (ii) 雇用主がこれらの保証を遵守し、こうした遵守を証明できること、を条件として労働日数協約の有効性を認めました。
破棄院はこれにより、一方で労働協約が業務管理と調査の具体的方法を含んでいることを監視する責任を持つ労働組合に対して、また他方で適用される協約の規定を遵守する義務を負う雇用主に対して、給与労働者の健康と安全に関する要件が守られていることを管理する責任を負わせています。
第二に、破棄院は、適用される労働協約の規定違反への制裁に関する法解釈を変更しました。
2010年1月13日の判決(破棄院社会部判決第08-43.201号)で破棄院は、労働日数協約を締結していた給与労働者の労働編成の協約上の調査方法を雇用主が遵守しなかった場合、損害賠償の権利が生じるだけで労働日数協約の有効性は問題にならないと判断していました。
2011年6月29日付判決により破棄院は、労働日数協約の規定に雇用主が違反したことを認め、調査規定違反により労働日数協約の効果は失われるとし、その結果、給与労働者は残業手当の支払いを主張し得ると判示しました。
この破棄院の新しい立場は、とりわけ、雇用主に従業員の実働時間数の証明義務を負わせるとする残業時間に関する特別な証明規則を鑑みると、雇用主に大きなリスクを負わせるものとなります。
したがって各企業には、労働法L.3121-46条に規定されている、労働者の労働負担、企業内の労働編成、仕事と私生活の兼ね合い及び報酬に関する個別の年次面談を確実に開き、報告書を作成しておくことが特に推奨されます。さらに、適用される協約の規定に加えて、例えばIDバッジによる方法など、労働時間管理制度を配備するのが望ましいと思われます。
また、労働法L. 3121-47条の規定により、労働日数協約の有効性を問題にする意思のない(あるいはすることができない)給与労働者でも、自らに支払われた報酬が「自身に課せられている責務(例えば労働負担など)に明らかに見合っていない」ことを証明できれば、損害賠償請求を裁判所に提起できるという点に留意すべきでしょう。
結論として、今回の破棄院判決はフランスの労働日数協約制度を有効とみなしていますが、欧州社会憲章の規定に関し、とりわけフランスの労働日数協約が認めている週毎の労働時間に関して欧州社会権委員会が加えた批判に完全には答えていません。今後、この労働日数協約を完全に問題のないものとするために立法府の介入が妥当であると考えられます。

Nathalie Cerqueira ベルセイ&アソシエ法律事務所 弁護士 オフカウンセル
Nicolas Lepetit ベルセイ&アソシエ法律事務所 弁護士